敵「板挟み」を4回差し戻し、「倒せる板挟み」に決めるまで
社畜サバイバーの敵「板挟み」を、自動プレイの A/B 比較で7回測りました。HP を上げる案と倒せない案は4回差し戻し、運営者が遊んだ感想も受けて、HP600・連鎖して倒れる・22秒で退場する形に落ち着くまでの記録です。
「社畜サバイバー」の会議室には、2体1組で現れ、間にビームを張る敵「板挟み」がいます。2026年7月28日から8月3日にかけて、この敵の強さと形を、自動プレイの A/B 比較で7回測りました。HP を上げる案は、上げるほど全体の成長が遅れ、記録は許容の幅に収まる上限を HP450〜500 と見積もっています。倒せない形にする案は、寿命を縮めると幅に収まりましたが、運営者が遊んだ感想で覆りました。最後に残ったのは、HP600 で、片方を倒すと両方倒れ、22秒で自分から退場する「倒せる板挟み」です。自動の測定を通ることと、遊んで納得できることは別だと分かった記録です。
挟まれる前に倒してしまう
板挟みは、7月14日に会議室の新しい敵として加わりました。2体がプレイヤーを挟む位置を取り、間に張ったビームをまたぐとダメージを受けて、動きも遅くなります。片方を倒せばビームは消えます。線を意識して動くか、どちらを先に倒すかを考えさせる敵です。
7月28日、運営者が遊んだ感想として「挟まれる前に倒してしまう」と記録されました。7月14日にも同じ種類の指摘があり、HP を85から145に上げていましたが、武器が育つと145では足りませんでした。
測り方
変更の良し悪しは、自動で遊ぶ操作プログラム(以下、自動プレイ)に、変更前(A)と変更後(B)を同じ乱数の種で遊ばせて比べました。主に会議室を9通りの種で、残業レベル0・通常勤務・4倍速で走らせます。合格の幅は測る前に決めておきます。平均の生存時間が変更前の85%以上、撃破数が0.90〜1.10倍、到達レベルの差が±1.0以内です。倒せない案からは、板挟みの撃破がなくなる分を見込んで、撃破数の幅を0.85〜1.15に広げ、その理由も測る前に書いています。
測定と判定は、改善ループを回す AI のエージェントが行いました。運営者は案を選び、実際に遊んだ感想を返しています。
| 日付 | 案 | 主な結果 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 7月28日 | HP300、出る頻度の重み0.12→0.07 | 出現が0.41倍まで減りすぎ、在宅ワークにも波及 | 差し戻し |
| 7月28日 | HP300、重み0.09 | 3通りではレベル差−1.33。9通りで再判定し、生存−1.4%、撃破数0.989倍、レベル差−0.56 | 採用 |
| 7月28日 | HP1000 | 撃破数0.837倍、レベル差−2.33 | 差し戻し |
| 7月29日 | HP600 | レベル差−1.33、在宅ワークの生存0.896倍 | 差し戻し |
| 7月30日 | 倒せない板挟み(寿命45秒) | 撃破数0.821倍、レベル差−2.44 | 差し戻し |
| 7月30日 | 倒せない板挟み(寿命22秒) | 生存−5.5%、撃破数0.930倍、レベル差−0.89 | 採用 |
| 8月3日 | 倒せる板挟み(HP600・連鎖・22秒) | 生存−8.2%、撃破数0.916倍、レベル差−0.22 | 採用 |
数字を上げる案は通らなかった
最初の案は、HP を300に上げ、出る頻度を下げるものでした。出現は狙いの0.5〜0.7倍を下回る0.41倍になりました。在宅ワークの「走馬灯」の場面でも板挟みが出ていて、変更がほかの職場に波及することも分かり、差し戻しました。頻度の下げ方を緩めた2回目は、3通りの種ではレベル差が−1.33で幅を外れ、測る前に決めた規則では差し戻しに当たりました。AI のエージェントは、種ごとの生存時間がプラスとマイナスに割れていることから、3通りでは数が足りないと判断しました。そこで、結果を見たあと、追加の測定の前に判定の規則を固定し、新しい6通りを足した9通りで判定し直しました。閾値は変えず、追加の測定は1回だけと決めています。差は−0.56に収まり、採用しました。
次は、運営者の指示で、記録で敵の「パワハラ上司」と同格とされる HP1000 を試しました。撃破数は0.837倍、レベル差は−2.33で、9通りの種すべてでレベルが下がりました。攻撃は自動で敵を狙うため、2体で合計2000の HP に火力が吸われ、ほかの敵を倒せず、経験値も入らない、という連鎖です。運営者が選んだ中間の HP600 も、レベル差−1.33で幅を外れました。HP1000 から倒せない案(寿命22秒)までの4回は、別の敵「レーザーポインター役員」の HP を120から170に上げる変更も同時に測っていて、記録はその影響を切り分けられていないと書いています。
HP300・600・1000 のレベル差は、−0.56・−1.33・−2.33 です。記録は、この3点がほぼ直線に並ぶとみて、上限を HP450〜500 と見積もり、上司並みの存在感は数字だけでは届かない、と結論しています。ただし、HP300 の値は HP145 との比較で、出る頻度と経験値も同時に変えています。600 と 1000 は HP300 との比較で、経験値とレーザーポインター役員の HP も同時に変えています。この上限は、条件の混ざった3点からの推定です。7月30日の振り返りでは、2〜3点を先に測っていれば、上限は1回で分かったと反省しています。
倒せない板挟み
次に運営者が承認したのは、板挟みを倒せない存在にする案です。弾はすり抜け、触れてもダメージはなく、半透明の体の上に「部長」「専務」の肩書きを出して、間のビームだけを脅威にします。火力が吸われる問題は、これでなくなるはずでした。
寿命45秒のまま測ると、撃破数0.821倍、レベル差−2.44で幅を外れました。AI のエージェントは当初、自動プレイが倒せない板挟みを見失い、ビームを避けられないためだと書きました。その後、避ける処理を足す前の確認で、自動プレイにはビームの線を避ける処理がすでにあると分かり、診断を訂正しています。記録は、倒せない2体が必ず45秒居座り、ビームの壁を迂回する移動が増えて、敵を倒す時間が減ったことが主な原因だと結論しています(説明しきれない部分が残る、とも書いています)。寿命を22秒に縮めると幅に収まり、7月30日に採用しました。
遊んだ感想で形が変わった
8月3日の記録では、運営者が遊んだ感想が「名札違和感・不死は強すぎ・22秒は良い」とまとめられています。肩書きを出すのはこの敵だけで違和感がある、倒す手段がまったくないのは強すぎる、ただ22秒で去るのはよい、という内容です。片方を倒せば両方倒れる連鎖は、運営者の案として記録されています。
そこで、見た目を通常の敵に戻し、HP600、片方を倒すと両方倒れ、22秒で退場する形にしました。近づいて集中して倒すか、離れて22秒逃げ切るかを選ばせる狙いです。片方を倒せば済むので、倒す手間は HP600 の1体分です。倒せない形を対照にした A/B で幅に収まり、採用しました。
意外だったのは、撃てる敵に戻すと、自動プレイが板挟みから受けるダメージが、1回の勤務あたり27.6から11.9に減ったことです。弾で押し返せるようになり、敵として距離も取るようになったためと、記録は分析しています。一方で、自動プレイは22秒で HP600 を削り切れず、板挟みの撃破は1回の勤務あたり0.2でした。倒すか逃げるかの選択は、自動プレイでは測れません。
見分けられるようにした演出
同じ日に、ほかに2つの感想を受けて直しました。1つは「倒したのか帰ったのか分かりにくい」です。退場の3秒前から点滅させ、退場の瞬間に「退社」の文字を出しました。設定の「低モーション」では、点滅の代わりに半透明で表します。もう1つは、片方を倒して両方倒れたことに気づきにくいという感想で、記録には「狙っている側しか見ていない」とあります。倒した側に「共倒れ!」の文字を出し、2体を結ぶビームが焼き切れる光を足しました。8月4日には、運営者の指示で、光が倒した側から相方へ走る動きに変えています。どれも数値は変えていません。
人の確認では、8月3日に「人間なら確実に倒せる」「点滅退場の判別OK」と記録され、8月5日の「演出は一旦これでOK」で確認の項目を閉じました。
分かったこと
- 数字のつまみで解けるかは、2〜3点を先に測ると早く分かる。ただし、点ごとに比べる相手や同時に変えるものをそろえないと、見積もりは粗くなる
- 自動の合格の幅を通ることは、遊んで納得できることの必要条件で、十分条件ではない。倒せない案は幅を通ったが、遊ぶと強すぎた
- 撃てること自体が、圧力の逃げ道になる。倒せる形に戻すと、受けるダメージはむしろ減った
- 自動プレイが測れないもの(倒すか逃げるかの手応え)は、人が遊んで確かめるしかない
板挟みは、社畜サバイバーのゲームページで紹介している会議室に出てきます。自動プレイの数字をどこまで信じ、どこから人の評価に任せるかは、自動プレイの計測を面白さの証拠にしない線引きの制作ノートにまとめています。